2014年11月15日

子どもの目で見た満州引き揚げ(1)

終戦の日の前日、内戦を目撃  
 昭和20年8月14日午後、戦況は末期にあることを知っていた母と祖母は、神妙な面持ちでラジオの放送に耳を傾けていた。
その時、窓の外でパンパンパンという銃声と怒号が突然激しく行き交うのを聞いた。
その騒ぎに驚き、二階の廊下の窓に架かるカーテンの隙間から覗き見ると、家の前の広い道路を隔てて兵隊たちが撃ち合っていた。
 子供の目には、同じ顔をした兵隊たちが仲間同士で撃ち合うのが不思議に思えた。
後で知ったのだが、これは以前から反目し合う蒋介石率いる国府軍と、毛沢東率いる中国共産党軍(八露軍=パーロ)が、戦勝国としての統治権を競って撃ち合いをしたのである。
 目前で兵士が倒れ、歩行中の一般人が流れ弾に当たって倒れる。そのうち、銃声が一段と激しくなり、我が家のガラス窓にも穴が空いた。俺は母に首根っこを掴まれ、引き倒されて部屋の奥に引きずりこまれた。
正に文字通りの市街戦であり、直近の距離で撃ち合うというアナログ極まる戦いである。それを、幼かった俺は見た。
子供同士が玩具の銃で撃ち合う戦争ごっこのようだったが、その跡には、確かに多くの兵士たちが横たわり動かなかった。この事件が俺たち家族の不幸への旅立ちの前触れであった。
posted by Yoshimura_F at 07:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 卒業論文集