2012年03月24日

感想

名物裂と日本の伝統文化(46)
感想

2006年の夏のことである。
父に「おじいちゃんの事典作りを手伝ってくれへんか?」と言われた。
それが、『名物裂』を知るきっかけであった。
祖父は10年程前から『名物裂事典』制作を一人で行っていた。
あまりに膨大な情報量とパソコン作業が増えることから、父と祖父の職場の方とで手伝うことになった。
最初は簡単な手伝いのはずだった。
私自身、『名物裂』についてそれほどの興味もなかった。
私は、主にパソコンの編集をしたが、今までほとんど触れたことがない世界である。『名物裂』に関しての、専門的な知識や、旧漢字を読めるようになるまで苦労した。
しかし、真剣に取り組む中で、祖父の仕事の偉大さを強く感じた。
祖父の辞典作りを手伝う作業は、多くの裂の魅力を私に伝えてくれた。手伝う中で、私は次第に真剣になった。
徐々に慣れてゆくなかで、『名物裂』にはまだ解明されていないことが多いことに気づいた。それが事典を作るうえでどれだけ重大なことか初めて気づいた。
私は、事典を出版することの大変さを実感したのである。そのころは、事典が本当に完成するとはとうてい思えなかった。
それでも、祖父の『名物裂事典』は完成した。
卒論で『名物裂』を取り上げることを決めたのは、祖父の今までの研究や仕事に対して偉大さを感じたことが大きいと思う。

卒論制作中に、父の友人であるスイスの方が、金閣寺でお茶をされるということで招待して頂いた。
お茶の世界は高貴な場所で、日本の礼儀や作法の原点がここにあるように思った。
お茶は、日本を代表する伝統文化である。
茶室から茶器に至るまで、素晴らしい伝統文化が集まり、それらを実際に使って頂くお茶には不思議な力がある。
日本の伝統文化を、緊張しながら楽しむことができる場所だと思う。
『名物裂事典』制作に参加できたことや、金閣寺という素晴らしい場で、お茶を体験出来たことは、私の財産になると思う。

参考文献リスト

1) 鈴木 一 2007年5月18日発行 『名物裂事典』 平和写真印刷株式会社
2) 『名物裂 渡来織物への憧れ』 五島美術館
3) 小堀 宗慶 『文龍 名物裂鑑金銀欄』 昭和61年1月14日発行 婦女界出版社
4)  長崎 巌 『茶の湯の裂地』 平成19年2月20日発行 大日本印刷株式会社
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2012年03月23日

まとめ

名物裂と日本の伝統文化(45)

\ まとめ

『名物裂』の歴史的背景は茶の湯だけの世界にとどまらず日本の文化に大きな影響力を持っていた。そしてそれは現代もまったく衰えていない。

名称の生まれた過程では人、場所、茶器道具、文様、伝承など様々のものと関わりを持っていた。

また同じ裂なのに時代によって違う名前が生まれた裂もあった。
このことが、私の祖父をはじめ多くの『名物裂』の研究者が、悩まされている大きな理由だと思う。

『名物裂』の価値は、思っている以上に高価なものであった。
見た目や、デザインばかりを見ていたが、価値を決めるのは、見た目や、デザインだけではなく、『名物裂』を製作する為に、様々な高度技術が使われており、またその裂と歴史的人物との関わりによるものが折り重なり、『名物裂』の価値を形成していくことが分かった。
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2012年03月22日

四座金襴(しざきんらん)

名物裂と日本の伝統文化(44)
5-d 四座金襴(しざきんらん)

金春金襴と同様に能の伝承による名称。
この裂は色彩も美しく古風を持ち仕覆にふさわしい裂である。
大和春日社に属した観世、金春、金剛、宝生を四座と言った。 
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2012年03月21日

金剛金襴

名物裂と日本の伝統文化(43)
5-c 金剛金襴

この裂も能の金剛流の伝承による名称。
色彩は白、花色、茶色、浅葱、紅、黄の経縞、上文は菱文、経五枚繻子に平金糸を三分の一越に織りいれて半径とし地絡みとじを行ったものである。
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2012年03月20日

金春金襴

名物裂と日本の伝統文化(42)
5-b 金春金襴

秀吉から賜った引き出物であると言われてきた。
能の金春流の伝承による名称。
色彩は白、萌黄、茶、金茶、浅葱、樺、縹色の七色の細い経縞の上に、文様は宝尽の丸文、吉祥文を散らしている。
経五枚繻子地の平金糸を半越、地絡みで織っている。
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2012年03月19日

二人静金襴

名物裂と日本の伝統文化(41)

5-a 二人静金襴(ににんしずかきんらん)
能の演目「二人静」からの名称。
この他、この裂で作った装束を着て「二人静」を舞ったという足利義政、豊臣秀吉の名も伝わる。
四枚綾地に箔糸を地を地絡みで押さえ、濃い柴地に丸文に表した二羽の鳳凰を互の目にした文様。
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2012年03月18日

覆盆子裂(いちごぎれ)

名物裂と日本の伝統文化(40)
4-c 覆盆子裂(いちごぎれ)

「苺」「猪智子」ともいう。
段毎に並ぶ楕円形の花文を果物の「いちご」(またはその花)に例えた名称。
文様は退紅色地に小花文様を段毎に表し、真田風の横縞を入れる。
「有栖川」と同様に地が厚く、挽家袋の裂として使用することが多い。
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2012年03月17日

縬(しじら)間道

名物裂と日本の伝統文化(39)

4-b 縬(しじら)間道
緯糸の撚(よ)りの強弱などによって帛面に縬を表す織り方からの名称。
文様は白地に茶、縹などの格子や縞など数種ある。
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2012年03月16日

大内桐金襴

名物裂と日本の伝統文化(38)
4-a 大内桐金襴

この名称を持つ裂は数種類ある。
地色は縹色、花色、紫、白、茶色、丹地などが用いられ桐文様で多様な形式のものもある
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2012年03月12日

清水裂

名物裂と日本の伝統文化(37)
3-c 清水裂

もとは京都、清水寺本尊の戸帳裂の名称と伝えられている。
地組織は五枚繻子地に、文様は濃紺地の柔らかい地合に、梅木に舞い降りる小鳥たちの姿や枝に咲く梅花を縫取織で表す。
部分によっては金糸も用いる。鹿、白猿など吉祥の動物を加え、額縁のように周囲に霊柴や雷文がめぐる賑やかなものもあり、一幅の絵画のような構成が特徴。

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2012年03月11日

鎌倉間道

名物裂と日本の伝統文化(36)

3-b 鎌倉間道
鎌倉、建長寺の引敷であった裂から生まれた名称と伝えられている。
文様は赤地に白、黒、縹、茶などの大小の縦縞のものや格子、鹿子などの文様が入る断片もある。
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2012年03月10日

大徳寺金襴

名物裂と日本の伝統文化(35)

3-a 大徳寺金襴
京都、大徳寺から生まれた名称であると伝えられている。
尊氏金襴ともいう。
地組織は五枚繻子(ごまいじゅし)地、地色は白、文様は石畳を四角い菱花文が繋いだもの。
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2012年03月09日

伊予簾純子

名物裂と日本の伝統文化(34)

2-c 伊予簾純子
茶道具の名前が、付属する仕覆を通じてそのまま名物裂の名称となった。
別名、「小石畳純子」ともいう。
文様は、紺、黄、丹、茶、萌黄などの色替りの筋に、小石畳の地文と宝尽文様をした華やかな構成を特徴とし繻子織の光沢が美しい。
この手の純子には、文様に金糸が入ったものもある。
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2012年03月08日

白極純子(はくきょくどんす)

名物裂と日本の伝統文化(33)
2-b 白極純子(はくきょくどんす)

室町幕府八代将軍足利義政に仕えた鼓打の名手「白極」が義政から拝領した鼓の袋裂から生まれた名称であると伝えられている。
経五枚繻子地、文様は萌黄や縹地に分銅繋、鳥袴文様。
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2012年03月07日

相坂金襴

名物裂と日本の伝統文化(32)

2-a 相坂金襴
金襴の中で特に美しいものの一つとしてよく知られている。
その美しさは金地大牡丹や富田金襴などの圧倒する金彩の豪華さではなく、また大燈金襴や二人静金襴のような寂びた古色のゆかしさとも違って、ほどよく知的に構成された近世の美である。
相坂金襴は所持者や伝来によって別名(長楽寺金襴、上柳裂、雲山金襴など)があり、同じ文様の色変わりがこれほど多種の別裂として扱われているものはない。
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2012年03月06日

葛城裂

名物裂と日本の伝統文化(31)

1-i 葛城裂
「葛城」という名の江戸時代の遊女が愛用した裂から生まれた名称であると伝えられている。文様は繻子地に金糸を交えて亀甲繋文を表した金入の錦。
裂地によって、地の色や亀甲文の大きさは一定ではない。
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2012年03月05日

紹紦(しょうは)

名物裂と日本の伝統文化(30)
1-h 紹紦(しょうは) 

蕉芭、正羽、肖紦など様々なものがある。
室町時代の連歌師・里村紹紦、所用の裂から生まれた名称であると伝えられている。
文様は一定ではなく、縞、動物文や幾何学文、吉祥文字などを段替りに金銀糸を交えて表し、杉綾、または崩し綾の地文を織り出しているものが多い。
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2012年03月04日

有栖川

1-g 有栖川

有栖川宮家に伝来した裂から生まれた名称であると伝えられている。
文様は各種あり、平地に複数の色糸を用いて、鹿文、龍文、馬文、雲文など独特な意匠による幾何学文様を縫取織で表す。
地組織の経糸は細く、緯糸は部分により三―五本引き揃えて太く仕立て独特な地合を作る。
SCN_0005 - コピー.jpg名物裂と日本の伝統文化(29)
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2012年03月03日

吉野間道

名物裂と日本の伝統文化(28)

1-f 吉野間道
後に灰屋紹益の妻となる、京都六条三筋町の名妓吉野太夫愛用の裂から生まれた名称であると伝えられている。
文様は濃い萌黄地に蘇芳、茶、白などの明快な大小の縞、横に太い真田を織り出す。間道の中でも、個性のはっきりした色と文様。
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2012年03月02日

青木間道

名物裂と日本の伝統文化(27)

1-e 青木間道
豊臣秀吉の家臣で千利休の茶人青木一矩(かずのり)、あるいは織田信長、秀吉に仕えた御伽衆青木法印が持っていた裂から生まれた名称である。
現在この名称で多くの種類と裂地が世間に伝わっている。
文様は花色、樺茶、白、黒、萌黄などの細経や太緯、格子。また金糸が入っているものもある。

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